2008/05/07

9年ぶりの再会





1998年9月銀座松屋の大きな美術画廊で



個展をさせていただいた。
突然の思いがけないお話で、

それまでは、日本では書のみの個展、

海外では抽象の絵のみ、というように



自分の中で二本の道が交わらずにいた。


ところが、松屋さんの美術画廊は大変広く


時間的に点数が揃えられそうもなかった。


迷った挙句サンフランシスコのギャラリーから


作品を返してもらい、ようやく間に合わせたのだった。


自分の心はずうっと後にそれを味わうことになるのだが、


私の書と絵と二本の道が交わった瞬間だった。


この個展の搬入の時でした。


まだ数点しか飾られていないその中から


「これを下さい」とお買い上げ頂いた"作品"を忘れられなくて、


それから一年以上経ったころ、


その"作品"の6倍ほどの大きさで書いたのがこの作品#17です。


昨年埼玉県川口市が企画して好評だった


「二人のクローデル展」に招かれた私は、


会場となった旧田中家住宅のお茶室の床の間に


その"作品"が収まっているのを見ることが出来たのです。


大好きな黒田泰蔵さんの花入れと共に。


9年ぶりの再会でした。

2008/04/21

作品 妖精の微笑b



作品の向こう側にあるものをイメージしながら、

そのこちら側を描く。

そういう制作の仕方を無意識のうちにしていることがある。

遊んでいるのだろうか。

不思議な浮遊感があり、自分のどの部分が遊んでいたのか、

まるで突然夢から醒めたように集中状態から解放されるのです。

作品 心の調べ







この作品を観るたびにコートダジュールの光を思い出す。

必ず心に甦る光景、アンティーヴのピカソ美術館。


絵を描くときに、私は「あれを描こう、これを描こう。」という思いを抱けない。

何か、言葉に出来ない、説明がつかない、自分の気づいていない、

自分の中に眠っているもの、まるでそれの掘り起こし作業のように

作品を作っているような気さえする。


バルセロナ、パリ、、、数あるピカソ美術館の中で私が最も好きなアンティーヴ。

その思いがこの作品を生み出したのかもしれない。

真っ白な特注の漆喰の額におさめられ、

夢に向かって進む持ち主のもとで、実力を超えた光を放っています

作品 香(か)


「いかにもしっとりとした匂うような作品です。」


などと、自分で感想を述べることが出来るのは、

「私が作ったものである」という意識がなくなり

作品を客観的に観ることが出来るようになっているからです。


紙と墨、空気、水、はたまた心の潤いなのか、

何が作り出しているのか、向こう側からしっとりと、

何やら不思議な色香が感じられる。

この紙は古い紙だったか、

それも空気に触れながら晒されて

このような錬れた感じになったのか

きっと、そうやって放っておいたものを

一気に仕上げて作ったものに違いない。


ああ、もう一度この紙に出会いたい。



作品 nontitled


良い人間でありたいと思ってきた。

良い人間てなんなのだろう。

制作以外のことが上手に出来なくなってきている自分。

それ以外のことは本当はやりたくないのかもしれない自分。

自分でしか居られない自分にようやくなってきたのかもしれない。


さて、この作品はめずらしくドーサの効いた厚口の麻紙に描いたものです。

「滲みの出ない紙なんて」と、がっかりしたのに、

突然集中して一気に書いたのを覚えています。

落款の場所に苦労しました。

しかしその「落款」が、この作品を自由にしたらしい。

私にはこの作品はまるで機械仕掛けのように動いて見えるのですが、

皆さんにはどのように見えるのでしょうか。


2008/03/11

作品 レディM 

-レディM-女性シリーズを制作し始めたきっかけは、

”抽象画は売れにくいから半具象も描いてほしい。”という

Chun Art Gallery(Seoul,韓国)の

オーナーの要望からだった。

半具象で私にしか出来ないこと、、、そんなことが見つけられるだろうか、、。

長く苦しんだと思うが、ある日ふとひらめいた。

「紙を残してまわりに墨を重ねていくことで"女性の肌"を表現できたら、、、。」

そうやって生まれたのが女性シリーズです。

日本ではまだそんなに多くをご覧頂いていないのですが、

この-レディM-は、肌の露出が最も少ない作品です。

ある女性コレクターの所蔵になっています。



2008/03/04

作品 潤


作品作りはいつも墨のあそびから始まる。

点とか面とか、四角とか、円とか、、、

そこに、私の中にある"針の先ほどの感情"を表現する。



自分でひどく注意深く、集中し、まるで脳の中を遊泳しながら


その"針の先"に到達するように丹念に探り当てるように水を得た墨を置いていく。


形は単に形であり、私にとってのその意味はあまり無いと言ってもいい。


墨であること、計算できない墨の世界が、水や紙、空気、の助けを借りて


できあがります。


この作品は形こそ単純でありながら、

そういう私の世界を最も如実に現しているように思います。

すでに個人所蔵になっている作品です。

2008/02/03

雪が舞っている。

明るいやさしい雪がふんわり舞っているように見える今日の東京。

たくさんの妖精たちがあちこちで囁きあっているよう。


ふんわりした"雪"が生まれそう。

2008/01/28

時を経て

札幌は今日はよいお天気らしい。

随分昔だが、札幌、小樽と2泊3日の旅をしたことがある。

雪に明かり、、、まるで雪に洗われたかのような空気。

自分と向き合うために用意された静寂、

全て安らぎの中に感じられて、

「何も気にすることなく生きろ」と、地面の底から地球の中心から声がした。

また行って来なくては。

2008/01/22

誕生日に。

人生は楽しい。

苦しいこと辛いことを経験すればするほど磨きがかかり、
幸せの意味がわかるようになる。

葛藤したところに絆が生まれ、みんな何倍も幸せになる。

つくづく幸せな今日の私です。

里依